去年の暮れ、COP28で冷却・冷房に関する取り組みがスタートしました。(Global Cooling Pledge)
この事は政治問題や大谷選手の移籍で殆ど報道されておらず、今月は現時点で調べた事を纏めます。
まず冒頭で興味を持って頂くため、アメリカのケリー気候問題担当大統領特使の発言を記載します。
『すでに大量の死者がでているのがわかりますよね。世界中で年間50万人が猛暑で亡くなっています。』 この後に予測以上に温暖化が早まっているとスピーチしています。
つまり現在発生している2つの紛争の10倍以上が猛暑で命を落としているのです。
皆さんにも他人事とは思ってほしくない。
COP28に関してはオフィシャルサイトがYouTube公開されており、まずは大まかに確認出来た内容を記載します。
この取り組みのきっかけは、一つが冷却触媒に使われたHFC(代替えフロン)がCO2の100倍から1万倍温室効果が高いとされており、温暖化の7%の要因と見逃せなくなっていると紹介されています。
2つ目が冷蔵・冷房に関わる電気エネルギーが世界レベルでも無視出来ない割合で、高効率のエアコン等に切り替えないと発電時に多量のCO2を排出するという問題。
それと最後は新型コロナウイルスのRNAワクチンがマイナス60℃とか80℃で保存する必要があり、この冷蔵の問題から発展途上国では十分に機能しなかったと言う問題が挙げられていました。
同様に先程のマイナス60℃の冷蔵レベルでは無いが、食品ロスの観点から発展途上国にも高効率な冷蔵庫が必要とも議題に挙がっていました。
又、発展途上国では暑くて本来は必要な冷房が全然行き渡っていないとの発言も多い。
これらの他に金融の団体や建築の業界からの視点、そして都市全体を高効率に冷却する必要が有るとか都市の植林で気温を下げた取り組みなど、始まったばかりなので様々な議論というより提案がされています。
以下は、国連の英文を翻訳したと思われる内容の抜粋
冷却は人々に安らぎをもたらしますが、世界の食糧安全保障や冷蔵によるワクチンの配送など、他のいくつかの重要な分野やサービスにとっても不可欠です。
しかし同時に、エアコンなどの従来の冷房は気候変動の主な要因であり、世界の温室効果ガス排出量の 7% 以上を占めています。
適切に管理されなければ、冷却に必要なエネルギーとそれに伴う排出量は 2050 年までに 3 倍に増加します。
つまり、私たちが涼しく保とうとすればするほど、地球はさらに加熱されてしまうのです。
現在の成長傾向が続けば、冷却装置は今日の総電力消費量の 20% を占め、2050 年までに 2 倍以上に増加すると予想されています。
エアコン (AC) や冷蔵庫などの今日の冷却システムは、大量のエネルギーを消費し、多くの場合、地球を温暖化させる冷媒を使用します。
UNEPの最新報告書は、冷却装置の電力消費量を削減する措置を講じることにより、2050年までに2050年の予測される部門別排出量から少なくとも60パーセントの削減につながる可能性があることを示している。
「気温上昇からすべての人を守り、食品の品質と安全性を維持し、ワクチンの安定と経済の生産性を保つために、冷却部門は成長しなければならない」と、COP28会場のエキスポシティでの記者会見でこの報告書を発表したUNEPのインガー・アンダーセン事務局長は述べた。
「しかし、この成長は、エネルギー転換やより深刻な気候への影響を犠牲にして達成されるべきではありません」と彼女は主張した。
- 補足すると具体策としては断熱、自然の日よけ、換気と反射面、より高いエネルギー効率基準、気候温暖化を引き起こすハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒の急速な段階的削減など、受動的冷却戦略で取るべき行動を概説しています。
報告書の推奨事項に従えば、通常の冷房による2050年の予測排出量はCO2換算で約38億トン削減できる可能性がある。
これは次のようになります:
2050 年までにさらに 35 億人が冷蔵庫、エアコン、またはパッシブ冷却の恩恵を受けられるようにします。
エンドユーザーの電気料金を2050年までに1兆ドル削減し、2022年から2050年までに累計で17兆ドル削減する。
ピーク電力要件を 1.5 ~ 2 テラワット (TW) 削減します。これは、今日の EU の総発電容量のほぼ 2 倍です。
4 兆ドルから 5 兆ドル規模の発電投資は避けてください。
(以上抜粋)
曖昧な表現なので、各報道機関でさえまちまちに表現しており、参考で2社の報道を引用します。
まずはNHKが非常に短く纏めた内容です。
この誓約は議長国のUAEなどがCOP28の会場で5日に発表したもので、「2050年までに冷房関連の温室効果ガスの排出量を、2022年と比べて少なくとも68%削減する」とし、日本やアメリカなど60か国余りが賛同しました。
誓約では世界には40億人以上が継続的に冷房を使えていなかったり、非効率な冷房を使っていたりするとして、安心して冷房を使える環境作りが必要だとしています。
しかし、一般的な冷房機器などに使われているフロン類は温室効果が二酸化炭素の100倍から1万倍とされることから、温室効果の低い物質を使った冷却システムなどの研究開発を支援するとしています。
また、誓約では、日本が主導する形で各国と連携して行う、すでに流通したフロン類の回収やリサイクルについての取り組みが紹介されています。
以上、ちょっとまだまだ判り難いですね。
続いてロイターの記事をそのまま引用させて頂きます。
[ドバイ 5日 ロイター] - ドバイで開催中の国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)で米国、カナダ、ケニアなど63カ国が5日、冷房に関連する温室効果ガス排出量を大幅に削減する誓約に参加を表明した。
「Global Cooling Pledge」は冷房による温室効果ガス排出に世界で初めて共同で焦点を当てたもので、食品・医薬品の冷蔵や空調が対象に含まれる。
2050年までに冷房関連排出量を22年比で少なくとも68%削減することを各国に求めているほか、30年までにエネルギー性能の最低基準を確立することなども目指す。
ケリー米大統領特使(気候変動問題担当)は「全てのセクターで冷房関連の排出量を削減しつつ、持続可能な冷房へのアクセスを増やす道筋を示したい」と述べた。
世界では約12億人の人々が冷房を必要としつつ、依然アクセスできていない。気温上昇、人口増加、所得拡大により、冷房設備容量は今世紀半ばまでに3倍に拡大すると予想されている。
この二つの報道も合算すると、これからCOPで行われる冷却・冷房、又はそれらの設備についての動きが判って頂けるかと思います。
『冷房設備容量は今世紀半ばまでに3倍に拡大すると予想されている』ところが肝だと思います。
個人的に目に留まったのは米国のケリー気候問題担当大統領特使が熱心でした。
ケリー特使はオバマ政権時代に国務長官を務めたが、頭をよぎるのは民主党なので少しさかのぼったアル・ゴア副大統領が主演した映画、『不都合な真実』を思い出す。
- 不都合な真実:2006年時点の異常気象などを纏めたドキュメンタリー映画でゴア氏は翌年ノーベル平和賞を受賞している
ケリー特使が当時の政権内でどのような立場だったのかはわかりませんが、環境問題に関しての熱意が受け継がれているように感じます。
今回のCOP28は2023年の世界的な異常気象や高温化を背景に、ケリー特使のみならず、これまでにない熱気を感じたと多くの関係者がコメントされています。
これは被害を補償する保険会社も後押ししている認識です。
なので自分には関係が無いと考えている方も間接的には自動車保険や災害関連の保険金が値上がりし、色々な試算が発表されていましたが温暖化対策にお金を掛けた方が安くなるという主張が大半のようです。
現実にもPBSの動画だったと思いますが、この数年高波やハリケーンで住宅や自動車に大きな被害を出したフロリダ州の保険料は、既に支払えなくて移住を検討する住人もいる程高騰していると気候変動の動画で紹介していました。
温暖化の危機は、NASAが積極的に情報公開しています
去年の暮れぐらいでしょうか、円周上に1月から12月を配置し、1880年から2023年の平均気温の推移をぐるぐると回転しながら暑くなるさまを表現した動画をTVで見ていませんか?
あれはNASAの関係団体が作成しており、1880年から1900年の前半は推測値と思いますが、気象衛星のデーターから視覚的に温暖化が急速に進行している事実を広く知らせる為に作成しています。
YouTubeのチャンネル名は『NASA Scientific Visualization Studio』です。
NASA_気候変動などでも検索出来るので、是非チャンネル登録して下さい。
NASAが提供するのは客観的な数値データーであり、いまだに温暖化は自然現象と考えている人達を軽く論破出来ます。
そんな中、最近二つの動画が追加されました。
アイスランドを筆頭に氷河の融解が進行しているのでしょう、この30年だけで世界の平均海面で見ても10cm以上上昇しています。
2023年は強いエルニーニョも関係しているとコメント欄に記載されていますが、とても深刻な状況です。
因みに去年の1月に南極で大きな氷床が分離したと報道がありましたが、今年の初めにも東京都の2倍ほどの大きさがある世界最大の氷山「A23a」が、去年11月ごろに海へ動き始めたと報道されています。
南極大陸から海へ突き出た箇所が氷床ですが、個人的には海面が上昇する事により浮力が増加し、次々に氷床が割れて分離し始めていると考えています。
勿論根本的に温暖化の影響で海水温が上がった事も関係している認識ですが、根本から割れるとなると、浮力が関係していると思います。
(海面が10cmも上昇すれば面積が大きいほど浮力も大きい)
こちらは前回の円周上に平均気温を配置した動画を、世界地図に分布し直した『正に地球温暖化が進行しているさま』が判る動画です。
動画自体は30秒とコンパクトに纏められていますが、一時停止を掛けながら温度上昇分布を確認すると、この年は暑かったよな・・・とか、沖縄のサンゴが白色化した年と時期がずれてリンクしているとかまで確認が出来ます。
又、これも気象衛星からの情報なので、気温計の設置状況に関係ない認識ですから都市部が気温上昇しているのはエアコンの室外機の排熱も関係しているかと思います。
前半の冷却・冷房誓約に沿って検証すれば、特にオーストラリアは都市部との関係が明らかだと思います。
(アスファルトが熱を持つヒートアイランド現象は勿論承知していますけど・・・)
この動画、最後の2023年の様子は衝撃的ですが、立場のある方には是非見て頂きたい。
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