世界的に風力発電・太陽光発電が増加し続ける中、火力発電所は廃炉を含め更新されず、東日本大震災の影響で原子力発電もかなり廃炉に向かっています。
また、膨大な電力を消費すると判ったAIの関連と大規模サーバー(データーセンター)の誘致の目論見か、原子力発電に関して日本は新規に増設するなど新たな方針を表明しました。
- 3月12日ヒューストン:アマゾン・グーグル等IT大手企業は世界の原子力発電の設備容量を2050年までに少なくとも3倍に拡大する目標を支援する誓約書に署名した
再生可能エネルギーの増加と電力需要増加の見通し。
電気業界にとって現在は過渡期であり、今月は停電のリスクと共に解説します。
不安定な風力と太陽光は扱いが難しい
これは最近出たばかりの話題なので話半分で聞いて頂きたいが、普段から再生可能エネルギーや蓄電池の記事を良く見るのでアゴラに掲載された『エネルギー貯蔵の難題』という記事がスマホのネットニュース上にピックアップされました。
内容はアメリカの地球温暖化政策財団の会長が、エネルギー貯蔵の難題(ナンセンスさ)を論文に纏めたとし、日本に置き換えると再生可能エネルギーだけで電源を供給するにはどれだけ莫大な蓄電池が必要になるか、との概要です。
そもそも蓄電するにしても変換効率が伴うので、発電された電力の100%が貯められる訳では有りません。
蓄電池にも色々な種類がありますが、それぞれのカタログ値を信じると、平均してざっと85%の効率としましょう。
効率85%だとしても裏を返せば毎回15%のエネルギーを捨てる事に変わりは無く、しかも貯めた電力が何日間維持出来るのか、又、長期で見れば蓄電池の劣化も加味しなければならず、最近増えた机上の考えで余った電気を蓄電池やEV車に貯めると解決出来るという内容では解決出来ないと私も思います。
記事では蓄電池を据え付ける必要面積も想定してトータル的にナンセンスと纏めてました。
私も電気技術者の端くれなので需要と供給の難しさを理解していますが、電気ってどんどん発電すれば良いという性質ではなく、周波数を管理しながら常にバランスを取る必要性が有るのです。
テレ朝で頻繁に持ち上げていた洋上風力発電もかなり厳しい状況に
2月末に関連の業界では驚きのニュースが流れました。
それは三菱商事が国内洋上風力発電事業において522億円の減損損失を計上したという内容です。
何十年前になるでしょうか、風力発電は日本でも一時期中小企業まで名乗りを上げて多くの企業が独自の技術を開発していました。
そこから法律や環境の問題などが障壁になった認識ですが、採算も合わず、大型の風力に関しては殆ど撤退したようです。
なので三菱商事が計画していた洋上風力発電も海外へ発注したそうで、建設コストが2倍になったのが原因とされています。
元々三菱商事は事業者公募の入札で、1kW当たりの電力販売価格をかなり安く提出して落札出来たので、導入する時も赤字、運用が始まってからも赤字が見込まれるというかなり厳しい状況のよう。
このような背景から最後の第3ラウンドになると思いますが、風力発電に適した東北の日本海沿岸の洋上風力発電には最初どの企業も手を挙げなかったとも記事で読んだ記憶があります。
これは日本だけでは無く、最近行われたデンマークでの風力発電でも入札がゼロだったらしい。(情報源ドイツ公共放送DW)
因みにデンマークというかヨーロッパでは、太陽光発電が増えて夏の晴天時には電力が余っている背景もあるらしい。(電力価格がマイナスで取引される事があるそう)
そのような背景から、元々の約束なら契約した1kW当たりの電力販売価格を維持しなければならないところ、一部は相場に連動しても良い旨の政策転換が行われるそうです。
- 色々な条件が有り、興味が有る方は申し訳在りませんがご自身で調べて下さい
風力発電発注に関する損失は計上したので三菱商事が被る事になりますが、その後の電力販売価格が当初の想定より上がるという事は、我々が電気代に上乗せされている再エネ賦課金等から捻出される可能性が出て来たという事ですね。
まあ個人的には風力発電反対派ではなく、むしろ環境に良い事だと考えていたのですが、Youtubeには様々な問題点が最近出てきて一度この辺りでメリット・デメリットを洗い直した方が良いと思うようになっています。
東京都知事も小笠原諸島を風力発電だらけにすると記者会見で発表したし、風力発電は海外が先行しているので悪い情報にもしっかり目を向けて欲しいものです。
申訳無いですが今回もテレ朝は洋上風力の良い面ばかり報道していたので、ちょっと浅はか過ぎると思います。
これが問題:実際にカリフォルニア州で広域停電が発生した件
日本では報道されなかったと思うのですが、去年の8月も、再生可能エネルギーの比率を上げたカリフォルニア州で広域停電が発生したようです。
(注意:YouTubeで見たが、去年も危険な日があり2020年の停電を解説した番組かも知れない)
原因は凄く暑い日の夕方、ソーラーパネルは当然発電出来ない状態になり、日没後に人々が帰宅した時一斉にエアコン(クーラー)を使い電力需要が急増したのが発端と分析されています。
この時に大容量の蓄電池があれば乗り越えられたかも知れませんが、風力発電もあてにならないし、火力発電も停止状態から電力供給出来る回転数に上るまではタイムラグが伴うので悪い条件が揃えば最悪停電してしまうのです。
- 多くのケースでは周波数の低下を検出してまずは火力発電が強制停止します。 その後風力発電も保護目的で遮断されます。
- 現時点で正式発表は未だですが、スペイン・ポルトガルの大規模停電も類似要因かも知れない。
日本なら最悪電力不足になった時、決められた優先の低い地域から先に停電させるとは思いますが、広域停電に発展すると復旧するにも時間が掛かってしまうのです。
今後再生可能エネルギーが増加するにつれ、このカリフォルニア州と同様な新たな問題がもっと表面化していくでしょう。
少し掘り下げて説明すると、今の風力や太陽光発電はオールシーズンで全ての電力需要を賄っている訳では無く、春や秋の晴天時にはメガソーラーに発電停止要請を出すレベルになったものの、夏や冬には多くでエアコンや暖房器具を使うのでまだ足りていません。
机上で考えれば春に余る太陽光の発電分を夏に使えれば良いのですが、それに近い状態を作れるとしたら水を汲み上げて位置エネルギーに保存する揚水発電のみで、今の蓄電池に長期の電力保存は向かないでしょう。
だったら昔言われた夜間の余剰電力を蓄電しますか?
既に半数近い原子力発電所を停止させている日本には事実上余剰電力は無く、風が少ない日は火力発電で蓄電池を貯めるというそれこそナンセンスな事態になっているのです。
補足:建前上エコキュートを推進していた大手電力会社は夜間電力割引きを廃止していませんが、大半の電力会社が新規の契約を停止しています。 理由はエコキュートの普及と太陽光発電の増加とされていますが、本当は原子力発電停止の影響が大きい。
因みにシャープや蓄電池メーカー等が地域全体の電力需要に合わせた蓄電池の管理法を進め始めていますが、トータル的な運用が出来るのは2050年以降になるでしょうね。
補足:ソーラーが発電した電力を火力発電に余力があれば蓄電し、火力の余力が少なければ蓄電せずに電力系統へ流すような考えです。 いや~そのような制御をしている時に地震で広域停電が発生すれば管理しきれますかね? それこそブラックアウトを誘発しそう・・・
新着:恐らく良い情報となるであろう新しいきざしもあります
先程蓄電池に関して少し否定的な内容に纏めましたが、これには理由があり、現状では費用も高く製造時に沢山CO2を出して、寿命も短いと考えているからです。
私もFit終了時点で結構調べましたが、住宅用の蓄電池に魅力を感じませんでした。
それに最初からZEH住宅として住宅用蓄電池を一緒に採用するなら取付けの基礎を強くする事が出来るでしょうが、阪神淡路大震災を知っているので既存の住宅に大容量の蓄電池を後付けしてもM7クラスなら倒れるだろうとの危険性を感じるからです。
もし倒れただけで済めば良いが、発火して火災になれば購入が仇になってしまう・・・
しかし去年の秋、ポータブル電源メーカー大手のjackeryから非常に興味深い商品が出て、防災の事もあり jackery 2000Newを購入する事にしました。
最大の特徴はUPS機能があり、充電と、満充電後はそのままの100Vを冷蔵庫など2次側へ供給(パススルー)が可能で、停電時には充電部からの給電も継続します。(注:切換えに20mS掛かりテレビ等落ちる機器も有る)
UPS:デスクトップパソコンで瞬間停電や一定時間の停電を補う電源で、類似の機能がある意味で完全なUPSでは無い。しかし2次側に機器をつなぎっぱなしで使えるメリットは大きい。
又、2000Wクラス最軽量の17.9kgで、かなり衝撃にも強いそう。
そして省エネとしては、太陽光発電を既に導入しているので日中に充電し、日没後から電力会社の電気を使わずこのjackery製品に溜まった電力(電源)を使う事が出来ます。(この電源に接続した冷蔵庫やテレビのみ。 因みに残量が残っていれば有る程度の電子レンジも使用可能)
もうポータブルの領域を脱して特に太陽光発電を付けた家庭なら日常使い出来る仕様です。
これはカリフォルニア州で暑い日の日没後、太陽光発電がゼロになり一斉にエアコンを使って広域停電が発生した件を記載しましたが、この日没後の電力不足を緩和出来る事にもなります。
- 近未来の要望としては充電開始時間とポータブル電源からの給電開始時間も設定出来ればもっと商品価値が上がると思う。(内部に時計機能が無さそうだがスマホ連動でも可)
- jackery自体の電源コードをコンセントから手で抜いた時に少し火花が出たので今はELPAのスイッチ付きタップLP-A200を間に入れて、太陽光の発電量が400Wを超えた付近からスイッチをON(蓄電)にし、日没後からOFF(給電)にしています。
補足:充電開始時間は3000Newではスケジュール充電が出来るらしい
尚、長期停電が発生した場合、太陽光発電のパワコンには1個の非常用コンセントが付いているのですが、雲が通過すると途端に発電量が落ちるので事実上電子回路が無い扇風機や電熱のヒーター類しか使えないな・・・と考えていたのが、このポータブル電源を介して安全に使える筈です。
これは静かな充電モードという選択が可能で、充電電力を430W程に落として充電出来、且つ2次側には貯めた電源から供給出来るので雲の通過程度なら問題無く使えそうだからです。
- パワコン自体がそろそろ寿命なのでテストはしませんが、分厚い雲の時間帯以外なら使えそう
又、寿命も10年程に伸ばしたそうなのでCO2削減としても役立ちそうです。
これらの仕様から地域全体の電力需要とは連動しませんが、Fitが終了した太陽光発電を持っている住宅には最適な選択肢となるでしょう。
この実際の運用結果は秋頃にお知らせします。
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