2022年の新年早々、メディアで気になる記事が続けて公表されているので近々のエネルギー事情を纏めました。
- ドイツが3基の原子力発電所を停止し、石化燃料の高騰が続く見通し
2021年末、ドイツは計画通りに6基中3基の原子力発電所を停止しました。
ここに至るまで最大で19基だった原子力発電を段階的に廃止し、最後となる3基の原子力発電所も2022年中に運転を停止するそうです。
これらは1998年、脱原発を掲げる緑の党が連立政権入りし、2002年の改正原子力法の施行によって推し進められた施策です。
その時々の政治情勢により一時は原発廃止の延期も議論されたようですが、東日本大震災の原発事故によって廃止の方向が決定付けられたと報道されています。
尚、今EUではフランス等CO2を始めとする温室効果ガスを排出しないクリーンエネルギーとして原子力発電を推進する国と、ドイツやスペインを筆頭に脱原発を推進する国に分かれているそうです。
参考:2022年1月1日、EUの欧州委員会は、原子力発電を天然ガスと共にグリーンな投資先として位置づける方針を発表。
それにしてもタイミングが悪い。
私は電気系の国家資格を取得しているので発電計画、配電関連の知識を有している認識ですが、24時間安定した電力量を供給できる原子力発電はどこの国でもベース電力として割り当てられています。
ベース電力とはその国の電気エネルギーを安定供給する非常に重要な役割を担い、主に原子力と水力発電でまかなって、時間帯によって変動する電力は石炭や天然ガス、他に石油火力の分配で行っています。
近年ではそこに太陽光発電と風力発電の再生可能エネルギーが割合を大きくしていますが、太陽光は夜間と曇の日に発電が出来ず、風力発電もその日の風速によって大きく変動します。
冬場に想定される再生可能エネルギーの問題は、積雪によって太陽光発電が十分に機能せず、且つ風が吹かない時間帯を石化燃料の発電で乗り切れるかどうかに尽きます。
ドイツも最悪の事態は想定しているでしょうが、上記の再エネ不足の問題が数日続けばいずれかの石化燃料を大量に消費するでしょう。
よって既に天然ガスが取り合いになっている状況でのドイツの原発停止は、普通に想像しても天然ガスの価格は高騰するでしょうし、少なくともこの冬は一時的にせよ世界各国での備蓄も減るでしょう。
ドイツは原発を段階的に廃止していたので原子力発電の占める割合が2020年には11%と他の先進国と比べて比重は少ないものの、ロシアからのパイプラインを通じた天然ガス供給が上手く行っていないとのニュースがつい先月流れたばかり。
現在ウクライナ近郊で軍事的に不穏な動きをしていると報じられているロシアから、ドイツが狙い撃ちで厳しい条件を突きつけられるかも知れません。
ドイツは再生可能エネルギー関連の発電が整うまで原子力発電の穴埋めとして石炭よりもCO2を排出しない天然ガス発電を予定していただけに、しばらくは電力供給が不安定になり、本当にブラックアウト(大規模停電)するかも知れません。
尚、ドイツは石炭を自国で賄える資源国家ですが、CO2削減の流れから石炭火力も相当削減しており、電力は風力発電が20%とかなりの比重を占めています。
確かドイツ企業はポーランドの敷地も購入し、大型の風力発電を設置してるというニュースが有ったと記憶していますが、去年欧州では想定通りの風が吹かず、結果風力発電が機能せずに世界的な天然ガス不足のきっかけとなったので、一時的にせよ今年も風が吹かなければ一気に天然ガス不足が進む危険性が有ります。
この状況を判断してなのかインドネシアも今月は自国分の電力需要が切迫したとして石炭の輸出を禁止し、混迷に輪を掛けています。
ドイツの原発停止と直接関係しているというより石炭に関しては中国での電力不足が引き金ですが、天然ガスが高騰すれば石炭火力に走る国も増えると予想されます。
よってインドネシアは石炭の価格上昇を狙った行為のようにも見えますが、建前上は石炭の国際価格が上昇し、国内で売るより海外市場に売った方が利益があったので海外へ輸出し、インドネシア国内の石炭備蓄が激減したためと報道されています。
去年の原油価格高騰から端を発し、天然ガスも値段が上がり、恐らく石炭も想定以上に価格が上昇する見通しです。
石炭に関して日本は長期契約している事とオーストラリアから多くを輸入しているのでしばらくは大丈夫だと言われていますが、それぞれの石化燃料が何処まで高騰するのか心配です。
因みにご存知でしょうか、今回の冬は日本も電力供給量がギリギリで、既に東京電力は廃止予定だった古い石炭火力発電を再稼働しています。
世界的にCO2の削減も近々の課題ですが、これからの数年は再生可能エネルギーとのバランスが凄く重要で、他人事ではなく一人ひとりが省エネに取り組む必要があります。
今年の夏場は更に電気代も上がるでしょうし、Windリーダーによる換気冷却も上手く活用する事が必要になってくると思います。
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